DTP概論

DTPお題目


1.DTP○○○○○○って…


 いま印刷物を扱う業界では、以前『グラフィックデザイナー』と呼んでいた職種を『DTPデザイナー』と呼ぶようになりました。『DTP』とはDESKTOP PUBLISHING―直訳すると『机上(きじょう)の出版』なんてことになるのですが、印刷業界に限ってはDESKTOP PREPRESSといって『机上の、印刷する前段階(前作業)』と言う意味も持たせているそうです。
 まあどちらの意味に取るにせよ、『DTP』という概念は業界の人間が思うほど世間一般にはあまり知られていなくて、「グラフィックデザインのことだよ。」というと、ああそうか、と納得するわけです。グラフィックデザインという分野は、本来はこの『DTP』と呼ぶ分野を含めた広い範囲を指すわけですが、業界団体は「そんなことは常識だよ」なんて驕る前に、定義付けや改名称するなどして中高生に進路のひとつとしてもっと知らしめないといけないですよね。
 関連職種についてさらに説明しますと、似たようなものに『Macデザイナー』『DTPオペレーター』『Macオペレーター』というものがあります。最初のは『DTPデザイナー』と同義語ですが、機種がMacということになります。次の二つはやはり同じような意味なのですが、ソフトの操作ができればデザインはあまりできなくてもよいのです。そのような環境はたいていの場合、別に手描きで指定をするデザイナーがいて、その指定されたものに従ってソフト操作をするというものです。ただし会社によっては、『出力機』(印刷機で印刷をする場合、刷版という工程を経るために必要※別記参照)の操作をする係とか、クリエイティブなことに限られてはいませんので、求人に応募する場合は自分の目指す方向に近いものかどうかは確認した方がよいでしょう。ただ、今就職活動中の人に一言。わかっているとは思いますが、今の景気状況にあっては希望と完全に合致する職に採用してもらうのはとても困難です。方向性が似ているところで採用の可能性があれば、そこでしばらく勉強した方が良いと思いますよ。僕らのようにすでに中に入ってからも、今の時代は仕事と勉強の繰り返しですから。

2.(私的)グラフィックという考え方


 ちょっと横道にそれましたので本線に戻ります。
ここからはグラフィックデザインというものについて、僕なりの思い・考え方についてお話しします。
 突然こんなことをいうと「え?」と思う方もいらっしゃるでしょうが、僕はデザインに完全なものはないと思っています。
 “より良くと考えて制作すること”は当然のことで、また逆にこれはタブー(それをヤルとコンセプトや構成が崩れる)、やっちゃダメという考え方も存在するわけですが、商業ベースにのるため・のせるためのデザイン制作の世界ではクライアント(スポンサー=お客さま)サイドとの妥協点を見いだすことが非常に重要です。
 仕事の成立というのが人と人とのやりとりの上で成り立つものである以上、そこに“善し悪し”ではない、“好きか嫌いか”という考え方も生じてくるわけです。
 ちょっと哲学っぽい話になりましたが、放っておくと人の要求・欲求は限りがないので、その行き着く先を“完成”という表現をすれば、その担当者がコンセプト会議や数回のプレゼンなどの中で提示した要求・欲求を満たすことが一応の“完成”と呼べるわけです。しかし、人間に完全な人はいないのですから、数人の考えで創ったものと数百人の考えの中で創られているものでは異なるということがあっても不思議ではないんですね。
 巷に溢れる印刷物もそうやって作られていますし、現実問題として、お金(予算)とスケジュールの都合上、デザイン構成としての出来70%80%でホンちゃん(印刷)に入るということもゼロではありません。
……かなり堅苦しい文面になってしまいました。……
 要するに、商業デザインというのは高い完成度をめざすものの、どこかに妥協点を見いだすなり設定して制作進行をとり、商品化するのですね。
 究極を求めて…なんてことは、よっぽどの予算と時間が十二分にとれないと無理。その究極もそのプロジェクト内で納得しただけで、マーケット(市場≒消費者)の反応が思うものになるかは別。
つづく…(後日)


© Rakuten Group, Inc.